49 無知の知
子供の頃。
よく、農家のウチに遊びに行った。
農家のウチは、だいたいでかい。
だいたい、裏庭に卓球台なんかがある。
だいたい、おばぁちゃんがいる。
おばぁちゃんが裏庭で肥料になる用をたしたりする。
一個の顔みたいなしわくちゃの手で梨をむいて「いらっしゃーい」と客人を迎えたりする。
ボクは梨をバクバク喰う、、、
そんな平和で幸せな農家のウチで事件が起きた。
農家のウチは便所もでかい。
小便器と大便器が併設されている。
大便器はひとつの個室になってて、便所に入っても
もう一つの個室の扉を開けないと視界に入らなかった。
自分ちの便器は大便器だけだったから
ボクはその時初めて「小便器」と言う物を見た。
しかも、勝手知ったる「大便器」の姿が見えない。
そぅ、ボクはその時うんこがしたかった。
「すげぇー、やっぱり金持ちんちは便器の形もしゃれてんなぁー」
ボクは何の迷いも無く小便器のくびれた部分にケツを乗せた。
大人なら地面にべたっと座ってるぐらいの高さも
子供のボクには気にならなかった。
全部出し終わってから気がついた。
水を流す所が見当たらない。
それよりなにより、紙が無い。
なんとなく不安の一端を感じつつ
便器の上部に取っ手を見つける。
ひねってみる。
水は流れるが、、、
うんこがぐちゃぐちゃになる。
ケツを出したままトコトコ辺りを徘徊し個室の扉を開けてみる。
「あちゃー。こっちじゃん！」
一瞬にして全ての謎があきらかになった。
点と点が線となり変な汗がどっと出て来た、、、
個室大便器のトイレットペーパーをガラガラ取り出し
ボクは（小便器から）すくっては（大便器へ）捨て
（小便器から）すくっては（大便器へ）捨てを繰り返す。
子供の頃の記憶はあまり無い方だが。
これだけは忘れる事が出来ない、、、
「知らない事を知らない」と言うのは怖い事だ。
写真のクルンとした金具は、一体なんなんだろう、、、、？