14 扉を開けるのが怖い、、、

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中学3年生の春。
中学生活を締めくくる年を何か華々しく飾る事は出来ないか、と思い
僕は1年間かけてビックプロジェクトに着手した。

それは、給食で余った牛乳パックを毎月1個保管し続ける計画。
4月から始まってひと月に1個、計12個の牛乳を
ロッカーの中に隠し持っていた。
(正確にはひと月に2、3個ストックする時もあったし、夏休みの分はどうしたのか定かではない)

そして、この計画は、確実に、秘密裏に、繊細に、安全に行われた。

当時、僕は発育が遅く(前ならえが腰に手のチビ)
フォークダンスの時、ほとんどの男子が女子の手の平に
触るか触らないかぐらいに指先を乗せていたのに対し、
僕は女の子の手をギュッと握るタイプだった。
自分は別にこれでいいやと思ってた、、、

かといって、裁縫道具箱を男のくせに「カブト」のデザインじゃなく
「マリ」を選ぶ程、ひねくれた自己主張も嫌いだった。

人と違う事をする人間には見られたくないけど
人と同じである必要は無いと思ってた、、、
だから、、、
思春期の遅れた僕は、恋する事も無く「牛乳パック」を集めていた、、、

卒業式の日、コンプリートされた牛乳パックを前に
世界を牛耳った岡田真澄の気分に浸った。
古いモノは発酵してるのか膨らんでた。

そして、別れのとき。

僕は、教室の右前方のスピーカー(お昼の放送とか流れる所)を
ドライバーでねじを外し、隙間と言う隙間に
1年かけて集めた牛乳パックを押し込み、
再びフタをしてネジをしめた。
余ったものは、洗面台に叩き付けて割った。
ドロドロのヨーグルトが出て来た、、、

子供ゆえの時計仕掛けのパラレルワールドの完結である。

時はすぎ、、、ぼくはおっさん、、、
あの頃、エキサイティングしたマドンナ(牛乳パック)達は
今、どうしてる事だろう、、、


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