27 グラデーション
不況なんだろうな。
上の階に行くほど生気がなくなってる。
最上階は廃墟だし、その下の階も微妙に赤提灯の灯が寂しい。
なんだか人生を感じさせる。
親父のパンチがだんだん痛くなくなってく寂しさがある。
ところで、人生のフロアを上がってくのは
エレベーターではなく自分の意志で階段を使ってると思う。
大概、学生を過ぎれば大人の階段を自ら上る。H20。
しかし、中には、いつまでも大人になれない人達がいる。
以前、こんな人に逢った。
編集所でナレーションを書いていたら
突然、一人の中年が僕に声をかけて来た。
「お久しぶりっす!覚えてますか?」
年の割にはフレンドリーなしゃべり方だった。
「?」
誰だか思い出せなかった。
すると彼は言った、、、「ボクですよボク!汗かきジジィ!!」
その人は僕が芸人時代、よく一緒の舞台に立っていたピン芸人『汗かきジジィ』だった。
汗かきジジィは、出番前に霧吹きで汗をダラダラにしてパンツ一丁で舞台に立っていた。
私服で汗をかいていない汗かきジジィを見てもピンとこないはずだ。
それよりなにより、大人の社会人として仕事をしているつもりだった僕に
いきなり「汗かきジジィ」は無い。
「お前、俺の事見えるのか?」と妖怪に言われた様な気分だ。
明らかに彼はまだ若者のフロアでがんばっている様子だった。
アレから数年、、、
汗かきジジィは、今も舞台のソデでキリフキを吹いているのだろうか、、、